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2024年05月17日
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TSサンプル。

2003年02月12日
T.S.は
transsexuaの意味です。

が、ただのほもエロです。

いつもどおり士郎さんがらめえ言ってる。


 ネタとしてはベタベタだよな。
 と自身の身に起こったことを見てしみじみと思う、ほど冷静でいられたのは、自分よりも増して混乱し、思考停止している奴が目の前にいたからだった。こういうときって、サーッて冷めていくよな、いろいろなものが。

 今朝方のこと。
 痛む体をさすってみれば、目が覚めた場所はいつもの寝室ではなく例によって土蔵で、昨日の鍛錬の途中で軽いしっぺ返しを受けて気絶、そのままここで朝を迎えてしまったという構図。首を回せばゴキゴキと音がする。変な体勢だったようだ。体中の関節の具合がおかしいのか違和感がひどい。今日は学校もないことだし、朝から湯船に浸かって筋肉をほぐそうか、それとも軽いランニングでもしてこようか。
 とにかく顔を洗おうと母屋に向かった。
 朝日はまぶしく、空は晴れ、鳥は鳴き。
 なんてことはないいつもの一日の始まり。ランニングのあと風呂にしよう。そうしよう。もう弓兵は起きて朝食の支度にとりかかっているだろうか。たまには俺に作らせてくれてもいいのに。などと言えば「貴様がおきてこないのが悪い」と黄金色の美しい卵焼きを焼きながら言われるに決まっているのだ。ていうかお前より早く起きられるすべを俺は知らない。どんなにがんばっても絶対先に起きてるし。いや、うまいんだけどさ、だしとかさ、同じ材料で作っているはずなのに。いまだ弓兵の調理のテクニックを盗み終えていない俺はどうにか同じキッチンに立ちたいのだが、いつでも居間に行けば出番は既に残っていない。完璧すぎてぐうの音もない。昼食夕食のときは張り付いていられるのだけれど。
「おはようアーチャー」
「ああ、おはよう士郎。早く顔を洗って来い」
 キッチンで鼻歌でも歌いかねないほど機嫌のよい(調理中はいつもそうだ)アーチャーは振り向きもせず鍋の具合を見ている。なんか小花が飛んでいる、ような。――うん、小花?
 なんかおかしいな。
 何がおかしいのかわからない、それにもまして目の前の光景がおかしい。んん? ごしごしと目をこする。ものすごーく変なものがある。変度でいえばAランクの宝具クラス。俺のステータスなんかきっと(弓兵を考慮に入れて)幸運Eだろうからあっという間にほふられてレッツゴータイガー道場だ。死してなお師匠に虎竹刀で滅多打ち。なんかくどくなったがとにかくそれくらい、破壊力が。
 しばらく長い間。呆然とそれを見ていた。頭が再起動するまで数分。目の前ではくるくると実に手際のよい弓兵が着々と朝食を作り上げている。ふわんふわんと小花。眼病かとおもうがどうやら違うみたい。そうだったらどんなによかったか。
 ――たぶん、あれがそうなんだろうなあ。
 長い時間をかけて導き出した答えに、やるせない気持ちがこみ上げる。犯人探しなど、考えるべくもない、限られた人間の中でこんな趣味をしているのがせいぜい一人か二人。うち一人は俺たちにそんなに興味がないはず、であれば残りは一人。しかし今はそれを追及すべきではない。
 もうひとつの違和感が消えない。いや、なんとなく気がついている。ただ、そうと認識するのが怖い、したくない、断固として!
「アーチャー」
 意を決して呼びかけた。確認のため、わかっているけどけっこうダメージきそうだ。だってお前って未来の俺の姿の可能性のひとつだし。
 硬い声に振り向いたのは、ああもちろんお前だよな、アーチャーだよな。この家に今、桜と藤ねえがいない以上一人しかいないよな。
「どうした、腹でも痛いの……かっ?」
 がたん、と持っていたお玉を取り落とす。味噌汁のしずくがちって床をぬらした。弓兵にあるまじき失態だ。
 さすがに俺に向かって「誰だ」といわないのはつながった絹糸のようにほそーいほそーいレイラインのおかげ、かもしれない。うん、俺だってそのカラーリングがなければちょっと、かなり全力疑いたい。うそであってほしい。
「な、な、な……」
 はくはくと口を開け閉めしている。おーおー珍しい顔だな。
「なんだそれはぁああ!?」
 人を指差すな、行儀悪いぞ。ってわからなくもないか。
「やあ、アーチャー、俺をどうこう言う前に鏡を見ようか」
「――え?」
 開いた口がふさがりませんな弓兵の腕を取って、鍋の火を切って、どんどこ居間から洗面所まで引っ張っていく。処理能力が格段に落ちている弓兵は簡単に俺に引っ張られて、そして大きな鏡の前に身をさらす。
 とりあえず、耳をふさいで、と。

「なんだ、これはぁあああああああああ!?」

 大きな叫び声、常にないその声の大きさは弓兵の混乱の度合いの大きさを感じさせた。
 鏡を掴み、そのあと、むんずと鷲づかみをした。
 もにゅ、
 文字にしたらこの通り。
 ああ、見事な、

「おっぱいだな」

 我ながらかすれた声に、ああ自分は疲れているんだとなどと、ぼんやり思った。
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